大判例

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東京地方裁判所 昭和22年(ワ)3147号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕原被告間に統制法規に違反して板硝子に関する売買契約が締結されたが、売主たる被告に不履行があつたため、原被告合意のうえ右売買契約を解除し、被告は既に受領した代金を返還する旨の契約をした。原告は右契約上の義務の履行として売買代金の返還を求める。被告はこれに対し、本件売買契約は統制法規違反の無効な契約であり、無効な契約については法律上契約解除の余地がないから、たとい原告主張のような合意解除がなされても、かかる行為は法律上何の効力もなく、従つてこれに基く原状回復として当事者が既に授受を了した代金の返還を約したとしても、これまた法的拘束力をもたないから、原告の請求は理由がない、と争う。次いで被告は、統制法規違反の行為は民法七〇八条の不法原因に該ること明らかであるから、原告の本件代金返還請求は不法原因給付を求めるものとして許されず、たとい当事者間において返還の特約をしたところで、かかる特約は強行法規に違反するものとして無効たることを免れない、と主張する。

〔判断〕判決は本件売買契約が統制法規に違反した無効なものであることを認定したうえ次のように被告の抗弁を排斥している。

(一) 無効な契約について契約解除なる観念を容れる余地のないことは、まことに被告所論のとおりであるが、無効な契約といえども一旦締結された以上は、外観上その形骸を存することは争えないところであり、かかる形骸を止める限り後日に紛争の禍因を残すこともまた争えないところであるから、契約当事者がかかる禍因を断つたためその形骸を除去することを約することはもとより妨げなく、この場合当事者がその形骸を除去する方法として合意解除なる用語を用いたとしても、徒らに法律の用語例にとらわれてこれを無効と解する必要はない。本件売買契約の合意解除もまたかかる意味に解せられるから、被告主張の如くこれを無効とするの要なく、従つてその原状回復として既に授受された代金額相当の金額の返還を約することもまたもとより妨げない。

(二) 統制法規違反の行為に基いて授受された金品が民法七〇八条所定の不法原因給付に該当するか否かは学説判例上争あるところであるが、仮に不法原因給付に該当し、給付者においてその返還を請求し得ないものであるとしても、元来同条が不法の原因のために給付をした者にその給付したものの返還を請求することを得ないものとしたのは、かかる給付者の返還請求に法律上の保護を与えないというだけであつて、受領者をしてその給付を受けたものを法律上正当な原因があつたものとして保留せしめる趣旨ではなく、従つて受領者においてその給付を受けたものをその給付をなした者に対し任意返還することは勿論、さきに給付を受けた不法原因契約を合意の上解除し、その給付を返還する特約をなすことは、同条の禁ずるところではないと解するのを相当とし、かかる特約を民法九〇条に違反する無効のものというべきではない。

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